原題は'No Ordinary Deal' (Unmasking the Trans-Pacific Partnership Free Trade Agreement )である。訳せば「普通ではない契約」になる。副題は「TPP協定の正体を暴く」
オバマ大統領にとって再選のためにはアメリカ経済を立て直さなければならないが、その人身御供にTPP参加国が供せられる、というのがずばりその正体だという。オバマ大統領はアメリカ市場をがっちり外壁で守った上で、TPP協定国をアメリカの大企業に都合のいいように規制を緩和し、市場を準備するのだという。
ケルシー教授が「異常な契約」と呼ぶ理由もそこにある。ニュージーランドや日本などが、TPP協定のデザイン(内容作り)からはずされているのに、そうした国々が一体いかにしてアメリカ市場に参入できると信じられようか、というのである。
そもそもトレードアグリーメント(通商条約)と銘打っていること自体が誤解だという。TPPは輸出入がメインの協定ではそもそもない。TPPの中核部分は参加国の国内政策をTPPによって改変することにある。その背後にはワシントンでうごめいているアメリカの各業界のロビーストたちがいる。
たとえばアメリカの製薬業界はTPP協定国の保健医療行政を米製品の売り込みに都合のいいように変えて行きたい。ニュージーランドなら、Pharmac(薬の輸入を管轄)、オーストラリアならPharmaceutical Benefits Scheme などを操作することが予想されるというのだ。さらに、食品管理の基準や知的財産権についても同様にアメリカにとって都合のいい形に参加国を変えていくことになるだろう。
その最も恐るべき局面はひとたびTPPに参加してしまったら、TPP協定に反する規制をした場合、海外の投資家から政府が訴えられることも可能になるというのだ。その裁判も当事国の国内法廷ではなく、WTOや世界銀行などがもうけた法廷で行われる。こうなると、一国の国内政策もなしくずしにされてしまう。選挙で改革を望んでもTPP協定に反する政策は不可能となる。
(この記事(*オリジナル)は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)