2011-03-01

韓国FTAとTPP 「毒素条項」

日経ビジネスオンライン 2010年12月15日(水)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101213/217516/?P=3&ST=spc_infral

(1)サービス市場開放のNegative list:サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。

(2)Ratchet条項:一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。

(3)Future most-favored-nation treatment:未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。

(4)Snap-back:自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。

(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement。韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。

(6)Non-Violation Complaint:米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。

(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。

(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用
 例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。

(9)知的財産権を米が直接規制
 例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1~2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。

(10)公企業の民営化

 ほかにも、いろいろな毒素条項がある。

関税がなくなるとか、○○が輸入されるとか、明確なことが書いてあれば、まだよい。それらに備えることができる。しかし、Negative listを適用するサービス市場開放や公企業の民営化はどうなるか分からない、どんなサービス市場が開放されるのか? どんな公共企業が民営化されるのか? 民営化された後はどうなるのか? 公共料金が高くなるのか? サービスの内容が変わるのか?

 はっきりしたことが見えないから怖い。

 例えば、米国には、全国民が義務で加入する国民医療保険がない。費用が高すぎて、米国民はまともな治療が病院で受けられない、という実態が韓国でもたびたび報道されている。医療保険が民営化されると、高い保険料を払っている高所得者が民間医療保険に流れ、低所得層やお年寄りに保険を適用することが難しくなることもあり得る。

 韓米FTAをめぐって、日本の反応とは異なり、韓国では反対の声の方が大きい。

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