2012-04-02

地震学 原子力工学 科学者のおごり


日本列島の至る所に地震源である断層が走っている。地表に現れているものさえ、その多くはホンのわずかな年月の風化により表面は覆い隠され直接的には見えなくなってしまうものも多い。

近年、地震学の進展によって地下に隠されたものも海底にあるものも、夥しい数の断層が発見されている。この発見とコンピュータシュミレーションの組み合わせによって地震の予知が精緻になったと信じられてきた。この予知はもちろん、過去の出来事の解析とはよく合致していた。

ところが、311が示したことは、研究の進展など地球が起こすダイナミズムのわずかな端をつかまえているにすぎないという事実だ。巨大地震の震源域は地震が起こりそうにないとされていた空白地域で起こり、想定外の巨大マグニチュードをもち、想定外の巨大津波を引き起こし、巨大な災害をもたらした。この事実の前で研究者は未知の大海の渚に佇む小さな存在であるという謙虚な認識を持たざるをえないだろう。

プレートがぶつかり合う日本列島に地震の空白域などなく、研究が進めば進むほど断層も過去の地震源もまだまだいくらでも見つかることだろう。今発見されている断層、震源域だけを根拠にした地震の予測シュミレーションなどほとんど意味がない。


同じような事が核の周辺の知見にも言えるのではないか。

核物理学や原子力工学にたずさわるものは、311原発事故が現実化したからには今まで想定していたことがいかに真理から遠いものであるかを率直に受け入れるべきだ。一度(ひとたび)事故が起きれば巨大な災禍をもたらす原発を、安全神話で覆い地震列島に54基も建設し、電力を原発に依存する体質にここまで導いてきた責任を思うべきだ。

放射線医学については、過去のデータベースに基づく疫学は、今回の事故で起こるであろう健康被害予測にはほとんど射程外で使いものにならないだろう事を素直に告白すべきだ。

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