2011-04-23

災害時の情報発信 NHKより

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2011年04月21日 (木)
時論公論 「災害時の情報発信」

大きな災害が起きた時、食べ物や水とともに必要とされるのが情報です。情報は、人々の命を守り、不安を解消します。今回の震災と原発事故、人々が必要とする情報、知りたい情報は、きちんと発信されたのでしょうか。
東京電力福島第一原子力発電所の事故では、おびただしい数の発表が行われました。しかし、それを聞いて当惑した人も少なくないでしょう。まず国の原子力安全・保安院の地震翌日の会見をお聞きください。
(原子力安全・保安院の会見3/12)
「ベントという作業を行いました。その結果、14時ころからドライウェルの圧力は急激に減少してまいりました。東京電力のモニタリングする車の計測値は、正門付近で13時40分に4.8マイクロシーベルト/H」
「ベント」「ドライウェル」「モニタリング」「マイクロシーベルト」
難しいカタカナがたくさん出てきます。この会見を一度聞いただけで、その意味するところを正確に理解できた人は果たして何人いたでしょうか。
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この会見の直後、福島第一原発の一号機は水素爆発を起こします。同じ日の午後6時から開かれた会見です。
(原子力安全・保安院の会見3/12)
「今、詳細について確認中です。情報を集めながら対応策を検討してまいりたい」
原発からは放射性物質の流出が続きました。深刻な事態にも関わらず、国の原子力安全・保安院が、住民に対し外出時の注意を呼び掛けたのは、地震の8日後、3月19日になってからのことでした。
▽徒歩よりは車で移動する。▽マスクを着用する。▽肌を出さないよう長袖のものを着る。
▽雨に濡れないようにする。
福島第一原発の半径20キロの圏内では、間もなく4月22日午前零時から立ち入り禁止の「警戒区域」が設定されます。であればなおさら、こうした住民の安全に直接関わる情報は、何をさておいても真っ先に伝えなければならなかったのではないでしょうか。
次に東京電力の対応を見てみます。3月12日の福島第一原発1号機に続いて、3月15日には、今度は2号機で爆発が起きます。その時の東京電力の会見をお聞きください。
(東京電力の会見 3/15)
「4種類、資料をお配りしていますが、圧力抑制室付近で異音が発生するとともに同室の圧力が低下しました。協力企業作業員および当社職員を一時的に同発電所の安全な場所などへ移動開始しました
こちらは、この時、東京電力が配布した資料です。タイトルは「職員の移動について」。
「爆発」、「退避」ではなく「移動」です。
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この時に限らず、東京電力は当初、「事故」という言葉を慎重に避け、「原子力災害対策特別措置法第15条第1項の規定に基づく特定事象」などと言い続けていました。なぜ「緊急事態」「重大事故」と言わなかったのか。深刻な事態と思われたくない、大したことはないと思わせたい。そんな意図があったと勘繰られても仕方ありません。
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ここまで国の原子力安全・保安院、そして東京電力の情報発信について見てきました。
ここで問われるのは、情報を発信する立場にある人が、誰に向かって、何を伝えようとしたのか。震災や原発事故によって被害や影響を受けている人達のことを念頭に置いていたのか。ということです。
今回の震災では、障害者や外国人など「情報弱者」と呼ばれる人達への情報発信でも課題を残しました。菅総理大臣や枝野官房長官の記者会見に手話通訳がつけられるようになったのは、地震の2日後、英語の同時通訳がついたのは5日経ってからのことでした。
地震の後、実に32の国が、東京にある大使館を一時閉鎖して関西などに拠点を移しました。最初の一週間だけで24万人の外国人が日本を離れました。中国、韓国、ロシアなどからは、
原発事故での日本政府の情報提供に不満の声があがりました。
海外に向けた情報発信も、特に初期の段階では十分ではありませんでした。ここでも、ただ外国語で情報を発信すれば良いという問題ではありません。相手が知りたがっている情報を、迅速に判り易く提供するという基本姿勢に欠けていたと言わざるを得ません
一方で、ツイッターなど新しいメディアを駆使して、効果的な情報発信を行った人達もいました
東京大学の早野龍五教授です。物理学者の立場からツイッターを通じて情報発信を続けています。「今現在、原発から風に乗って飛散している放射性物質はほとんどない」といった情報を、日本語と英語で発信し、15万人以上がアクセスしています。
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もうひとつ例を紹介しましょう。
「がんばろう!東北」と書かれたこの画面は、国土交通省東北地方整備局が、震災直後に設置した臨時掲示板です。
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当初、被災した市町村には通信手段がほとんどありませんでした。被災地に入った整備局の職員が持ち込んだ衛星通信設備を使って、市町村からの要望を毎日この掲示板に載せていったのです。
「必要な物資は、白米3万キロ、アルファ米、カップめん10万個...」
これは宮城県の石巻市からの要望、
「今ほしいもの、ソーセージ、ハム、玉子...」
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こちらは福島県の相馬市からの支援要請です。通信事情が悪い中で、被災した市町村からは、こうした切実な要望が続々と寄せられました。被災地から発信された情報を共有することで、物資の補給を円滑に行えるようにしたのです。実はこうした取り組みは、事前のマニュアルや災害対応計画にはありませんでした。東北地方整備局の担当者が現地のニーズを考えて独自に生み出したアイディアです。
新しいメディアや機材を使うだけが情報発信ではありません。こちらは気仙沼小学校に設けられた避難所で、地元の小学生が発行している壁新聞です。その名も「ファイト新聞」。
「夕ごはんにラーメンが出た」「電気、復活」「避難所での過ごし方、第一位はゴロゴロする」
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子供達が取材した記事からは、被災者を励ましたい、元気になってもらいたいという思いがひしひしと伝わってきます。
このように見てきますと、災害時の情報発信とは、どんな手段を使うのかということではなく、伝えたいという意思、情報の受け手に対する想像力があるかないかの問題だということに気付かされます。「命を救いたい」「被災者の役に立ちたい」という思いがあれば、情報はおのずと伝わりますし、逆にそれがなければ、どんな情報も説得力をもちません
「災害時の情報は、命を守るためのもの」この原点を、情報を発信する側も、そして情報を伝える我々メディアの側も、しっかりと肝に据えねばならないと思っています。
投稿者:出石 直 | 投稿時間:23:58
(転載終わり)-----------------------------------
NHK以外のメディア、特に地上波テレビは官邸・東電の情報を垂れ流すばかりかご用学者と一体となって安全神話捏造・広報を行ってきた。分かり易くかみ砕いて真実を伝える努力は見られず、確かな情報を流すべきメディアとして恥ずべき日々を過ごしてきたのではないかと疑っている。(民放は総計10時間も見ていないので確かなことは言えないが…)

(参考)ブログ内記事 リスクコミュニュケーションについて 小山真人教授

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