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2011-03-02

UPS 対 カナダ政府の紛争 NAFTA chapter.11

元資料: http://goo.gl/QaBjA
UPS(米国宅配便会社) vs. Canada
NAFTAのもとで公共サービスはどうなる?
WHAT HAPPENS TO PUBLIC SERVICES UNDER NAFTA?

1月24日、カナダ人会議とカナダ郵政公社労組(CUPW)は、オンタリオ州上級裁判所に対して、北米自由貿易協定(NAFTA)のルールに関する違憲訴訟を起こした。この訴訟は、外国企業が政府を訴えることを認める国際貿易ルールの合憲性について裁判所が審判する初めてのケースである。その結果はあらゆる公共サービスにさまざまな影響を及ぼす可能性がある

オンタリオ州上級裁判所は、NAFTAの第11章*について審議することになるが、この条項は政府の政策によって差別されていると感じた外国企業にその政府を訴えることを認めるものである。貿易問題専門の弁護士スティーヴン・シュリブマンによれば、「この条項はNAFTAのなかで最もショッキングで危険な部分であり、カナダの主権とカナダ市民の安全に対する大きな脅威である。
NAFTA発足以来10年の間に、カナダ政府を相手取って投資家から10件の訴訟が起こされた。原告はすべて米国企業であり、カナダの一般市民を保護する法律、たとえば、環境保護条例、有毒廃棄物輸出禁止法、カナダの水を保護する法律などが差別的であると主張した。これらの訴訟のうち2件はすでに解決したが、いずれもカナダに膨大なコストを強いるものであった。
NAFTA関連の投資家と国家との間の紛争は民間の国際裁定委員会で裁定されるが、この委員会は完全に国内法と憲法上の保護の枠外で機能する。「NAFTAのもとでは、政府はその権限をカナダ法の及ばないところで機能する国際裁定委員会に委譲したのである。これが非民主的であることは確実であり、私たちは今後、これが違憲であることも主張するつもりである」とシュリブマンは述べている。

サービスを裁判にかける

NAFTAは、企業の権利が国際法のもとで一挙に拡大されたことを示す象徴的存在である。まず、外国の投資家に対して、彼らが当事者でもなく、何の義務も負わない国際条約を直接的に発動させる権利を与えることによって、NAFTAは国際法の根本的原則、つまり国際的な貿易協定を発動できたのは、かつては当該協定の当事者である国家のみであるという原則を放棄してしまった。
NAFTAのもとでは、外国企業は、カナダの法律、政策、サービスに対して訴訟を起こすことができ、しかもその影響を受ける人々を裁判過程にかかわらせないようにできるのです」とCUPWの全国委員長のデボラ・ボルクは言う。「私たちの民主的な権利を損なう国際貿易協定に反対するために、私たちは訴訟を起こしたのです。」

違 憲 ?

この最新の訴訟は、NAFTAの第11章に違反すると主張する米国の宅急便会社UPS(ユナイティッド・パーセル・サービス)を相手取ってカナダ郵政公社が2001年に起こしたものである。UPSは郵便事業が公共であるという単にそのことで、カナダが不公平な競争を認めていると主張している。こうした論理を使えば、保健介護から教育に至るすべての公共サービスに対して同様の訴訟を起こせることになり、カナダの郵政事業のみならず、すべての公共サービスに影響を与えることになる。
法廷では、カナダ人会議とCUPWは、NAFTAのルールが加盟国の法律に優先するのは憲法違反であるという主張を展開する。

UPS対カナダの訴訟における2億5,000万カナダドルもの賠償請求は、広範かつ思いがけない大被害をもたらす可能性を持っている。UPSは、カナダ郵政公社が手紙分野での独占を利用して、自社の小包や宅急便事業を補助してきたと主張している。しかし、多くの公共機関のサービスを少なくとも一部民間部門と競争しながら提供する時代にあって、そうした主張は、水道から保健医療に至るまで、ほぼすべての公共部門の事業にあてはまることになる。もしUPSが勝訴すれば、公共サービスの民営化を迫る重大な圧力を生むことになるだろう。
UPSはカナダ郵政公社の年金制度と国内出版物の配送料に対する補助金制度についても苦情を訴えている。UPSはいずれもが不公平であるとして、それを根拠にして賠償金も要求している。]
この訴訟は不可欠な公共サービスのみならず、郵便労働者の直接的利害に影響を与えるものなので、カナダ人会議とCUPWはUPS側の主張を審判する仲裁委員会に対して、紛争当事者として裁判に参加させるよう申請した。委員会は、NAFTAの投資家対国家の紛争に第三者を参加させる権限を持っていないことを理由にして、この申請を却下した。しかし弁論趣意書の提出は認めるという余地を残した。
しかしながら、UPSの主張に反対するカナダ人会議とCUPWは、もし外国の大企業がカナダの公共政策と法律を変えたいのであれば、カナダの法廷でカナダ人の裁判官の前で、カナダの法律に則って、主張を展開させなければならないと考えており、それを確実なものにすべく決意を固めている。
詳細な情報はwww.canadians.orgとwww.cupw-sttp.orgに掲載されている。

* NAFTAの投資に関する章(第11章)には、NAFTA加盟国への投資と投資家に対するさまざまな権利と保護が含まれている。もしある国の政府がこうした権利と保護に違反していると企業が考えたなら、拘束力のある紛争解決のプロセスを貿易委員会で開始することができる。この場合、国内の法廷で適用される基本的な正当な手続きや公開の保証を一切しないですむ。こうしたいわゆる「投資家対国家」訴訟は、世界銀行と国連の特別国際仲裁機関で取り扱われる。この機関に対しては一般市民の参加、傍聴、意見の開陳は認められない。3名の仲裁専門家によって構成されるパネルは、企業がNAFTAによる投資家の特権と権利が侵害されていると判断する場合には、納税者が納めた税金を無制限にその企業に与える権限を持っている。

2011-03-01

NAFTA 11章 投資保護の問題

http://goo.gl/QaBjA     (投資に関する部分抜き出し)

CREP 地域主義比較プロジェクト
第9回月例公開セミナー「国家主権と地域主義」 2006.2.21
佐藤義明氏(広島市立大)
「NAFTAの合衆国憲法適合性:法化における"precision" と"delegation"」


 まず、第2の点、すなわちNAFTA第 11 章ですが、これは投資を保護する規定でありまして、NAFTAのある加盟国の国民が他の加盟国に投資をするという場合には、その投資に関して投資受け入れ国からの侵害があった場合には、強制的な仲裁に付託することができるということを規定している章であります。たとえば、合衆国の企業がカナダの環境規制が緩いということで、合衆国内であれば環境規制にひっかかって設立することのできない工場をカナダにおいて設立した。その後で、カナダの国内で環境保護運動が高まったがために、カナダが環境規制を厳しくして、その会社が工場を運営することができなくなった。これが、投資の保護との関係でどうなるのかということが、この第 11 章で争われることになります。
 現在では、投資家の保護が他の公益との関係でかなり厳しく運営されるようになっていますけれども、NAFTAが締結された初期には、投資をどこまで保護すべきであるのかということがかなり不明確でありまして、投資をした企業を過剰に保護するような方向にその仲裁廷が先例法をつくっていくのではないかという恐れが出ました。先ほど例に挙げたのは、エチル事件という事件のかいつまんだご紹介ですけれども、合衆国の会社がカナダに対して仲裁を申し立てた際に、この仲裁廷が管轄権を肯定した時点で、カナダはその会社と和解することを選びました。その際には、何億ドルという高額な和解金を支払うことになったわけであります。
 そうしますと、カナダ国内の環境保護運動を進めている人々からいたしますと、環境を保護するためのカナダが主権を行使して環境基準を決定をした際に、なぜそれによって汚染物質を生み出していた外国企業に和解または場合によってはNAFTA上の補償金を支払わなければならないのか、という疑問が生じてくるわけであります。そのような中で、ある意味では"delegation"の行き過ぎが問題視されることになる、つまり強制的仲裁を制度化することによって、その仲裁人となる国際経済法の専門家がNAFTA当事国の意思をも超えて投資を保護することになりかねない状況が主権に対する不当な制約として問題視されるに至るわけであります。

 このような仲裁裁定に対して、加盟国側からの対抗策が出まして、それがレジュメにご紹介いたしております 2001 年7月 31 日付けの「北米自由貿易委員会解釈ノート」であります。先ほどのエチル事件のように、投資の保護という名目で環境規制などが十分発動できないなど、お金を払わないと公益上必要な国内法制を整備することができないという状況に立ち至ったところで、この自由貿易委員会という、NAFTAの解釈に関して法的に拘束的な決定をすることができるNAFTA当事国の貿易担当閣僚で構成される委員会が、その投資の保護の水準については国際法の最低基準にする」という解釈ノートを出したわけであります。NAFTA上の投資保護が環境規制などさえも不可能にするほどに高いものではないということを加盟国の側が決定するという”precision”を進める措置ことによって、NAFTA第 11 章上の強制的な仲裁の仲裁人たちがつくり上げようとしていた先例法に、一定の歯止めをかけたわけであります。
 これは、ある意味ではNAFTA加盟国が"delegation"を受け入れ過ぎることによって、それらの国自身が予想していなかった効果が現れたことに対して、それら国の側が主権を行使して、”precision”を操作することによって、その効果に対してコントロールをかけたという事例であったということになります。
このNAFTAの強制的仲裁の先例というのは、その後に国々が投資保護協定を締結する際に、同じような強制的仲裁の制度をとるべきなのかという議論を引き起こしました。たとえば、最近のアメリカとオーストラリアの間の投資保護協定においては、NAFTA型の強制的仲裁の制度が意識的にとられないことになっております。したがいまして、ここに一つの主権委譲コスト、"delegation"のコストに関するせめぎあいが見られるであろうと考えます。