読書ノート
副題:グローバル経済はどこまで落ちるのか
ジョセフ・E・スティグリッツ
出版:2010.2
1943年生まれ
クリントン政権時 経済諮問委員会 世銀副総裁
■序章
□2008年危機
・(世界で数千万人が失業するという)このような事態は想定されていなかった。自由市場とグローバル化に信をおく…。ニューエコノミーは、規制緩和や金融工学など、20世紀後半を特徴付ける驚異的なイノベーションの総称であり、より優れたリスク管理を可能とし、景気循環を消滅させるはずだった。少なくとも景気変動のショックを和らげるはずだった。
・四半世紀の間、幅を利かせていたのは、自由市場至上主義だった。
・アラン・グリーンスパン/ロバート・ルービン/ローレンス・サマーズ
・この危機が金融セクターで露わにした問題点はより一般的であり、他の領域にも似たような問題があることが明らかになっている。間違った経営者へのインセンティブ・報酬などの単に劣悪な企業統治の問題ではない。
・新型金融商品・サブプライムローン・債務担保証券(CDS)。金融工学により新たに開発された金融商品、手口により銀行/金融機関は投資を募りレバレッジを効かせて自ら投資行動をすることができたうえに、損失を先延ばし/目隠しする事が可能であった。このことはリスクを分散させるどころか実は危機を深化させた。
・ウォール街の住人たちは千年に一度の嵐の不運な犠牲者だと思いこんでいる。しかし危機は気まぐれに金融市場を襲ったりしない。それは人為的なものであり、ウォール街がみずからに対して、そして社会全体に対して行ったことの結果なのである。
・自由市場至上主義者は、今もなおある確率で仕方なく起こるように、腐ったリンゴが混じっただけだと看做してシステム全体の問題から眼を背けている。
・市場は何度も誤りを犯し続けてきた。金融機関を救ってきたのは政府なのだ。
※実質は、政府の権力を使って金融機関の損失を国民に押しつけてきたのだ。2008年金融危機後に表面化したウォール街の巨大損失を米国は多国籍の枠組みを使い、各国に負担させ、国内的にも金融街およびGMに対し巨額の救済資金を投入した。使われたのは、国民の税金あるいは国債である。
※経済単位をミクロ・マクロに巨大化させるグローバル経済そのものが間違っているのではないか。EUの失敗は、経済単位を巨大化した地域統合が間違っていることを指し示しているのではないか。もっと小さな単位で、つまり今までの国家単位程度の大きさの経済領域の方が、必ず起こる景気後退の波や、危機をより小さくとどめる事ができるのではないのだろうか。米国という巨人の存在自体が間違っているのだ。たやすく”いびつ”になり、”いびつ”になればそれを容易に修正できない巨人が(他人の犠牲の上で)自由に活動するような世界システムを構築してはならないのだ。
※価値観は、結局のところ米国では、分厚い中間層を形成したケインズか、億万長者をスーパーリッチに押し上げたフリードマンかに分かれるのだ。私たちは少なくとも社会格差を拡大させ続ける道を選ぶべきではない。
※ポストモダンとはシステム的に腐ったリンゴたちを生む世界のことではないのか。
第一章 金融の暴走を許した者たち
・2008年の金融危機に関して驚かされたのは、あまりに多くの人が危機の発生に驚いたというその事実だった。少数派からすれば、あの危機は教科書通りの実例であり、予測することは当然可能だったし、実際予測されていた。
・低金利/金余りで規制の緩い市場と、地球規模の不動産バブルと、サブプライムローンの激増は有害な組み合わせというほかない。
※※
2008年金融危機と原発事故の比較において、有責者=犯罪者たちの言葉、認識が余りに似ていることに気付く。失敗は常に想定外か他人のせいなのだ。それが彼らエリートの性向なのだろう。他人への責任の押しつけによって、彼らの成果は勝ち取られてきたのだ。例えば、金融の利益の源泉はじつにここにあるのではないか。未来への押しつけ、他人への押しつけこそが金融工学の本質ではないのか。
※
・2002年ハイテクバブルの崩壊
・短期利益至上主義の住宅ローン商品の押しつけ販売
・銀行のリスク評価機能の喪失 (※日本のバブル期にも同じ事が起こっていた。貸し込み競争が、出世競争に繋がっていたのだ。営業部の突出。リスク資産の積み増し。単一商品=土地融資への集中。変動型金利ローンの開発・推薦)
・現代の錬金術師は、不動産保有を証券化することで、収入なき定年後の人生を生き延びるために積み立てられた年金基金をリスク商品の購入に導いた。
・この銀行の所業を賛美し、トリプルAの格付けを与えたのが格付け会社だ。規制緩和により銀行は直接ギャンブルに手を染めるようになった。
・銀行と規制当局は自分たちが作り出したぞっとするようなリスクを他社=他者に転嫁できると思いこんでいたのかもしれない。
・絶頂期の2007年米国の金融セクターは、企業収益の41%を占めていた。
・金融界が作り出した複雑な商品には二つの効果があった。リスクの増大と、情報の不完全性を生んだことだ。
・金融イノベーションは、バブルの生成に貢献したことは確かだが、経済の持続的成長に貢献したという証拠はない。
・CDS Credit Default Swap デリバティブ derivative
・フレディマックとファニーメイは民営化され規制緩和された企業
・(規制緩和論者たちは安易に、十分な規制緩和が行われてこなかったためにリスクヘッジが行えなかったというが)彼らは重要な点を見落としている。銀行を厳しく規制しなければならないのは、銀行が破綻した場合、経済全体への悪影響の波及効果が巨大なためである。(※それに加えて、そのことを理由に(社会全体の利益のためにという大義名分を掲げて)今度は政府による救済を求めるのだ。)
・規制緩和で得をした金融セクターの政治的影響力と、規制を不必要と断じるイデオロギー。
・短期収益至上主義者は《利益は先取りし、損失は先送りする》
※※市場至上主義の社会では、ミクロ組織の短期利益追求こそが善とみなされる。数値化し単純化して、単一の尺度に収斂させるのが米国的社会の形(ポストモダニズム)冷たい熱狂。金への執着。いびつな欲望。
・工業資本ではなく金融資本の性格。金融資本は事業会社の中に金融資本に相似形の組織=持株会社を作り込む。持ち株会社の本社は金融資本と同じ尺度で企業運営を行い、支配下におかれた事業部門を管理・監視する。さらに、みずから金融資本プレイヤーとして、企業の売買に及ぶ。
※
・バブル抜きには総需要が弱いまま推移しただろう。その原因のひとつは格差拡大の中で消費をする層から消費をしない層に所得が移転したためである。
・イギリスにも不動産バブルは起こったが、公的資金を受け取った銀行のトップは引責辞任した。オバマ政権のように無償提供はしなかったのである。
・※アイスランド 外国金融機関によって起こされたバブル崩壊の責任をとらされたのは、利益をむさぼった外国金融機関ではなく、遅れてやってきてババを引かされたアイスランドという狭い国境の内側に住む逃げることが許されない国民だ。ドリームファンドという名の悪夢は、グローバリズムの下で国境を易々と越えてやってきて、破綻という名前に変わったとたんに尻拭いは国境の内側で過剰に支払わされる。
・コミットメントの漸増(いったん一つの立場をとったら、立場を守る方向に強迫観念が働く)
・オバマの危機対応チーム(バーナンキ・サマーズ・ガイトナー)は、危機の種を蒔いた者たちであり、ウォール街の利益の代弁者だった。損失負担を、ウォール街にではなく納税者に負担させる政策を採用した。
・企業のリストラやコスト削減という名の労働者の解雇と賃金引き下げは、短期的に株価の上昇を招いても、近い将来に経済全体に悪影響を及ぼす。家計所得の低下がGDPの70%を占める消費にマイナス影響を与える可能性がほとんど必然と言っていいほど高いからだ。
□効果の薄い減税 減税は国家の債務を増加させていくのに反して消費刺激効果はほとんど期待できない。
・自動車や家電の買い換え促進プログラムは、確かに需要を喚起したがそれは未来の先喰いに終わった。長期的な景気悪化が見込まれるときには不適切な政策だ。
・連邦支出の増加は地方の歳出減によって相殺された。
・米国人の消費を持続可能な範囲で上昇させるためには貯蓄の余裕のある富裕層から有り金をすべて使わなければならない下層へと大規模な所得再配分を断行しなければならない。税金の累進性を強めれば所得再配分だけでなく経済の安定化も図れる。
□サブプライムローンのペテン
・サブプライムローン 借り手の自己責任を強調し、貸し手の責任逃れを可能にした。結果として脆弱な一般庶民が破綻させられる。
・銀行は数百万人の人々をそそのかし身分不相応の生活をさせ、老後の備えを危機に晒した。
・最前線の戦犯、サブプライムローンのセールスでさえ、自分の役割をこなしただけだと強弁できる。当事者からすれば、「契約増ー収益増」というリスクが捨象されたインセンティブに応じてローン契約を推し進めたに過ぎないのだ。
・資本増強と貸し渋り解消のためにそそぎ込まれた公的資金1750億ドルのうち330億ドルは経営者たちのボーナスとして支給され、1000億ドルは損失を帳消しすることに、残りは「配当」として株主に分配された。
※※
・金融救済プログラムにより、銀行や投資機関は、リスクが高いことでハイリターンな過去の収益はそのまま受け取り、損失は政府支出を通じて未来の国民負担から受け取る。
・日本の銀行は公的資金返済及び毀損された資本の手当のために、税金の支払いを猶予されてきた。その間、配当はどうだったのか?
・米国の不動産バブルの項を読んでいると胸が悪くなる。日本のあちこちで、まさにこのようにして銀行の不正なうそつき融資によって踊らされ、多くの人が破産に追い込まれたのだ。貸し手に都合のいい不動産鑑定士を連れてきて不当に高く見積もりさせ、融資をする。不動産屋が儲かり、ローン販売会社が儲かり、銀行や銀行の担当者が表向きにも裏でも儲かったのだ。契約するローンが借り手に不利であればあるほど、貸し手には多くの手数料と金利が支払われるのだ。借り手にとってリスクの高いローン契約を販売するインセンティブが構造化されていたのだ。
※
・リスクを見えなくする手法としての証券化
・信用格付け会社は、小さな将来リスクを評価できても、大きくて危険な将来リスクを、事前には評価できない。小さいリスクは少々外れたとしても小さな損失しか生み出さないので格付けなど不要だし、甚大な損失を生む未曾有のリスクは想定外に起こるので格付け会社は予測し得ない。つまり格付け会社によるリスク予測などクソの役にも立たないのだ。
□ブラックマンデーが起きる確率
・1987.10.19のブラックマンデーの大暴落は標準モデルによる計算では200億年に一回しか起こらない。少なくとも一生に一回しか起こらないだろうと思われるが、実際には10年に一度繰り返されている。
・住宅ローン・サービサー=債権回収代行業者の登場。債権回収に弁護士や業者に利益を生み出す新たなビジネスモデルが追加され、情け容赦なく債務者救済が毀損される。(※日本の公的サービサーは債権を買いたたき、また資産を超廉価で提供することで、結果的に中間層から超金持ち層への資産移転を行った。(結果的とは、ほとんどの場合意図的だという事だ)
・金融のメルトダウンが進行した。(※用語からしても、リスクの見積もりや経済人の行動にしても、原発と金融危機の構造はじつに似ている)
・金融セクターはさんざんイノベーション能力を喧伝しておきながら、リスクをアメリカの貧困層から取り去り、もっとリスクの高い層へ移転させるようなイノベーションは開発も提供もしなかった。
・例えば変動金利制度において、金利が上がるとそれに応じて満期日や返済期間を変動する商品を提供することも可能なのだ。(デンマークでは200年前からある)
(ノンリコース:資産から得られる収益のみを返済原資とするローン)
・エコノミストは銀行を経済の心臓と呼び、金融を血液循環に例える。心臓が病み、血液循環が滞ると経済がたちゆかなくなる。
(病んだ心臓は、確かに治療しなくてはならない。銀行家のためではなく経済のために。心臓部の欠陥は、取り除くという選択肢を含めて抜本的治療が必要かもしれない)
・循環を阻害した(利益至上主義の)非効率なシステムは、効率的で社会的に少しは公正なシステムに置き換えられなくてはならない。
・しかし米国政府(ブッシュ・オバマ)が採った銀行救済策の実態は銀行への巨額の贈与であり、納税者の目を欺く形で実行されている。
・金融危機が発生したとき、ブッシュ政権は銀行本体だけでなく、銀行家と投資家をまとめて救済することを決断した。そしてこの資金は透明性を欠いた形で供給された。
・何かが根本的に間違っていることを銀行家もその周辺にいる者たちも認めないし、過ちを犯したことさえ認めようとしない、…彼らが望んだのはとても完璧とはいえない既存のシステムを微調節した上で、2007年以前の世界へ、すなわち危機が起こる前の世界へ戻ることだったのである。
※※2008年のサブプライム危機に至るまでの金融工学によって新たに発明されたツールとは、日本のバブル発生時にに使われた”ふるい’”ツールである。米国は日本の危機から解決法を学んだのではなく、バブルの発生のさせ方を学んだのである。
※
・社会的利益と個人的利益の不一致。
・「大きすぎて潰せない」企業は、実は大きすぎて「経営不能」だったか、少なくとも舵の効きが悪かったのだ。
・人間の恐怖心を利用した謀略→大きすぎて財務リストラ=管財措置できないとの風評を広めた。
・システミック・リスク
・第三世界でこのような法案が通れば、それは間違いなく政府=納税者から銀行及びその後援者への大規模な再配分が行われることを意味する。財務長官ポールソンは、議会からポールソンへ白紙委任する法案を提案した。ポールソンはその出身地=ゴールドマンサックスとその仲間たちの代理人の役割を十分果たしたというわけだ。
・流動性の危機 自行は健全であると言い張る銀行が、他行の健全性に疑問を呈し資金を融通することを躊躇するようになった。他行の不健全性は自行の乱脈を経験している者には容易に推測が可能なのだ。
※※
(現状の日本のように低金利な国債にでも資金が向かうような投資先=借り手不足の状況で、産業への投資資金に不足がないとき)企業に外国に比べて相対的に重い税金を課せば、日本国に税金を支払うことをためらうような性悪な資本から日本の企業を守ることが出来る。
※
・銀行に税金を課せば経済効率性の向上と政府の歳入増を同時に達成できる。…しかし銀行はこう反論するだろう。課税によるコスト増は、民間からの資本調達を妨げ、金融システムの健全性回復の足を引っ張る。
※※政治こそが私的利益を優先するのではなく、国民国家全体にとっての利益=公共性を重視するモラル優先的な、誘導策(インセンティブ)を設計し、法案化することで市場の歪みを是正する必要がある。
※
・銀行の利害は、国民の利益から乖離しているだけでなく、経済全体の利害から乖離していた。(米国は金融界の利害に引きずられた)
※※
・世界最大の米国債保有者=中国は、日本と違って為替による減価を心配しなくて済む。(中国自身が為替管理を行っているため)インフレを起こさないように監視しているだけでよいのだ。インフレ抑止は米国内にもそのような自動安定化装置や勢力を持っているため、為替リスクに比べて中国の通貨危機の危険性は少ない。
・米国債は日銀にとって恒常的に減価していく不良資産だ。換金しない限り、つまりドルでおいておく限り減価しないと主張するなら、換金できないという点で究極の不良資産だ、と云っていることになる。
・ウォール街は持てる力と金を使って規制緩和を買い、ぼろ儲けをした。強欲ゲームのやり過ぎでバブルが崩壊すると、今度は同じ力を使って、自助努力することも自己破産させられることもなく、パブリックセクターから巨額の生活保護を厚顔無恥にも、せびり盗った。
・科学テクノロジーの進歩は金融リスク管理にも十分応用できるし、自分たちが開発した新しい金融テクノロジーによって生みだした金融商品によって、IT技術の進展によるバーチャル空間の拡大もあって、確かに利潤は拡大し続けた。10年ほども儲けが続くと、歴史書から学ぶべきものはすでになく、コントロール可能な新しい世界が到来したと、神童たちには思えたに違いない。
※
・金融業界は規制を求めるあらゆる動きに反対した。FRBも財務省も唱和したどころか、自由市場至上主義を主導した。ルービン財務長官、サマーズ財務副長官とアラン・グリーンスパンFRB議長が戦犯の名前だ。
※※
悪魔はどうしてこんなにもずる賢いのだろう。人々はどうしてこうも愚かなのだろう。大衆んの心理は、システムや枠組みの構造的問題こそが問題が引き起こすのだとは思わないように出来ているらしい。細部にはこだわるが、大局の動きには素直に従うか、無意識に目をそらす。※
※短期的成果給は、中下級管理者に適用するのが間違っているだけではなく、役員にもCEOにも適用するのは間違っている。
※銀行は透明性を好まない。透明性を実現した市場は競争が激しくなり、手数料を含め収益が低下するからだ。高度なリスク管理を行う事を目的に開発された金融商品は、極めて複雑に設計された。複雑化によって、金融市場はルールに定められたはずの透明性を失った。
しかも、リスクは管理されたのではなく隠されていただけだということが、バブルの崩壊によって誰の目にも明らかになった。
※グラス・スティーガル法が廃止されたのは1999年。商業銀行と投資銀行の垣根が取り壊されてしまった。
※米国の銀行は寡占化した。その流れで日本の銀行も超寡占化した。独占禁止法に触れずに寡占化させるために使われた論理が、巨大な外国企業の存在だ。グローバル化した世界の中では大型化しないと競争にも勝ち残れないし、なにより買収される危険性が増した。米国の野放図な産業政策のあおりを受けないためには=伝染病を防ぐためのフィルターが必要なのだ。国境というフィルターによって消費者利益・国民利益は守られねばならない。
言葉 derivative デリバティブ 派生
CDS credit derivative Swap
ロング ショート 値上がりに賭けるのがロング
・透明性/公開性の要求に対する金融界の決めゼリフは、”ビジネス上の秘密”である。ビジネス上の秘密がある取引をする場合は、それに対する自己責任を全うさせなければならないし、公的なものに関わらせてはならない。
・金融市場の甚だしい強欲さが顕著にみられるのは、大学生向け融資プログラムを継続させるために政治的圧力を使った場面だ。
・税制のありようは社会の価値観を反映させる。汗水垂らして働くことより、ギャンブルに精を出す投機家を優遇する必要はなく、いやそれははっきり云って不公平だ。
・米国の経済状態はGDPでみる程には良くない。30代男性の収入中央値は、30年前より低くなっている。
※米国大学の成功の秘密 ①ユダヤ人がいること②日本の進学校と同じく、優秀な人間を集めているから、優秀であること。
※民主的でもなく、国家統治にも長けていないことが明白な財務省=野田政権にその権限の増大をもたらす政策枠組みを与えることは間違っている。
・米国の優れた大学はすべて州立か非営利である。
※新自由主義的な仕組みでは、非雇用者=労働者には企業利益=全体利益に貢献する動機は見あたらない。アメとムチにより個々人の利益に直結する仕方=成果報酬型人事制度を導入することで、(短期の)企業利益の最大化が図れる。そのような利益誘導制度=インセンティブがない公務員は労働意欲がなく、民間企業のような効率的な組織運営が出来ない。→あらゆるサービスの民営化が必要である。
※スティグリッツはこう言う「市場がうまく機能し、機能しないかの問題は、詰まるところインセンティブの問題に行き着く。どんなインセンティブを与えたときに個人への見返りと社会的利益が合致するのか。」米国プラグマチスト哲学の正義論から離れることはない。
・金融業界への大規模な救済策は、ソ連崩壊時に国家財産が一部マフィアに集中的に譲渡されたときに匹敵するほどの富の再配分となった。
・市場に任せるか、規制をどの程度導入するか《制度の濫用は、透明性を高めた民主主義的プロセスを通じて点検していくしかない。》
・規制緩和というレーガンとブッシュのお題目は、政府への不信に基づいていた。※そうは思えない。むしろ金持ちの富の拡大欲望とそれを支持した大衆の大量消費欲望に基づいていたと思える。※
・企業への様々な減税や便宜供与などの利益供与が拡大され、セイフティーネットが供与されるのに反して、一般市民の福祉とセイフティーネットは削減された。
・G8は2007年まで、2008年の危機の後11月に初めてG20に拡大された。
・IMF資金提供条件
①中央銀行の金利引き上げ②財政赤字削減③銀行の民営化な
ど構造改革(民営化)④中央銀行の独立(政治・財政政策か
らの独立)
・これらの政策は債権国への資金回収を第一目的に立案されたもので、資金注入された債務国の景気回復や国民の生活維持の為ではない。したがってIMFによる管理はしばしば国民の激しい抗議行動を伴う。
・《朗報といえるのは、ドミニク・ストラウス・カーンが専務理事に指名されたことだ。彼の就任によってIMFがようやくケインズ流のマクロ刺激政策の必要性を認めた。》
※1989年ベルリンの壁の崩壊で、私たちは共産主義に終止符を打った。311を経てもなお私たち日本人は、この地震多発国で、核発電という巨大なリスクに終止符を打つことさえ出来ないほど愚かな政府/政府広報に徹し民意をゆがめるマスメディア/民意を汲み取ることの出来ない政治システム、に耐え続ける愚か者なのだろうか?※
・2008.9.15リーマンブラザーズ破綻によって、市場原理主義は終止符を打たれ、今日では、市場は自己修復できるとか、規制なき市場では参加者の利己的行動が全員の利益になるように機能するとかいう言説は、時代錯誤な詐欺師の言説であることが証明された。
・世界銀行とIMFはシカゴ学派のエコノミストに占められている。すなわちフリードマン流の新自由主義者たちだ。かれらは債務危機に陥った新興国に、金融部門の規制緩和、構造改革という名の民営化、貿易の自由化非関税障壁の撤廃を迫った。
※結果、各国で富の集中が起こり格差は拡大され、経済危機は何度も起こっている。民族資本が興隆するよりも、多国籍企業が各国に自由に参入するチャンスを拡大し、資本系列に置くことが出来るようになった。また金融市場の自由化は外国人投資家の自由を拡大した。ルールを多国籍企業に有利にしただけではなく、ショックドクトリンによって意図的に経済破壊を起こしたことが強く疑われている。
※米国の経済危機の際には、財政出動を行い金利を低下させたが、IMFは東アジアの新興国に対して全く逆の政策を押しつけたのだ。
※起こされた経済危機の中で、破綻を余儀なくされた金融機関は破格の値段で(優秀で効率的な経営を行うことが出来、金融テクノロジーのノウハウを持つ)時には国家によって、米国証券機関への手数料のおまけ付きで米国の投資家に売り渡された。
・トリクルダウン理論は、全くの幻想であった。もしくは詐欺だった。
※※政・官・経のエリートが愚か者であることが人間的に愚かであることを意味しても、統治する狡知において愚かであることを意味しない。橋下の品性の下劣さと、ポピュリストの才能に恵まれていることに似ている。
※多くの米国人は、比較優位すなわち各国が相対的に得意な分野の生産に特化する事で貿易が成り立ち、総体的な利益に貢献するメカニズムが理解できず、貿易相手国が政府の為替操作や補助金で不正なダンピングを働いていると信じ、非難してきた。
※農業には巨大なバッファ機能がある。他の産業へ供給できる余剰農業人口がある間は、労働者供給圧力が維持できるので産業の賃金は総体的に低く押さえることが出来る。農家は他産業に人口を拠出することで、所得の拡大が図れる。
以上
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