小沢氏の発言は、その時々の政治状況への発言にしても、基本的で射程の長い情勢判断と構想に裏打ちされている。
視聴者は、例えば日々の枝野氏の発言に揺れる〈マスコミ+メディア〉情報に基づいて超短期的な見方で小沢氏の発言を捉える傾向があり、小沢氏の発言が現状からズレていると感じる場合がある。自分の場合はそうだった。
ー小沢氏発言に触発されたことー
《原発再稼働》
原発再稼働についても小沢氏は、夏の電力過不足や手続き論ではなく、より基本的な、エネルギー問題からとらえる。それは国家が国民を食べさせるために存在するのだという、基本的な考え方を大切にするからだろう。
この小沢氏の考え方を踏まえると、原発が国民の生命を脅かす存在なのかどうか、その危険性の程度はどうか、どのような道筋で脱原発をすすめるのかの議論は成り立つ。経世済民を忘れた経済の論理だけで突き進む再稼働論議は薄っぺらく、危うい。
従来の、原子力は経過的なエネルギー源であるとの見方から一歩踏み込んで、ドイツが目指す10年で脱原発を目処にすると発言した。
《TPP》
世界経済の成長センターである東南アジア、その中心でGDP2位になりこれからも成長をやめない中国。国際経済情勢を踏まえたなかで、米国がTPPに込める意図を理解し、日本はどのように経済外交を進めるべきなのか、そのような視点でTPPについて発言しているように思える。ここでは、経済の主権の問題でもあるのだと言っていることに注目した。
TPPは経済構造協議の延長線上のもので、アメリカのシステムに合わせようとするものであり、交渉力の無い現状では米国国益追求の場になる危険性を指摘している。
《防衛問題》
このインタービューのなかでは、他の政治家からは聞けない防衛問題に関する発言がもっとも興味深い。日本の核兵器保持については明確に否定し、日米同盟のあり方の問題、尖閣問題それぞれに小沢氏的見方が開示されている。
特に北朝鮮についての発言に興味を引かれた。
中国が成長のために導入した市場経済は原理的に経済主体・人間の自由抜きにはありえず、共産党一党独裁体制を許さないと指摘している。市場経済下における急激な成長によって経済格差が拡大し、中国社会の不安定化がもたらされている。権力闘争の激化についても目配りしている。
北朝鮮は中国情勢に左右される。中国の統治機構が内政問題で揺れると北朝鮮への重石がはずれ、抑制が効かなくなるおそれがある。そのときは、北朝鮮の暴発があり得ると警告した。
「北朝鮮が暴発して戦端を開いたらソウルはあっという間だ。今の在韓米軍だけでは北朝鮮軍は押さえられない」
「北朝鮮は日本など見ていない。見ているのは米国だけだ。核兵器とミサイル開発は手放さない。」
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以下は「インタビューまとめ」
IWJ小沢一郎インタビュー 2012.4.18
《原発再稼働》
IWJ岩上安身氏「まず大飯原発再稼働問題。安全性の確立がなされていないまま、また根拠の薄い電力需給の試算での政治判断について」
衆議院議員小沢一郎氏「地元、国民全体が納得のいくような対策・説明がされないままに再稼働を政治的に決めてしまった」
「私は以前から原子力は過渡的なエネルギーと言ってきた。高濃度の廃棄物の処理をどうするのか、という問題があるから。しかし今すぐに全て止めるのは無理があると思っているが、再稼動には念には念を入れ、安全性の確認と電力が本当に足りないかの検証を行う必要がある」
岩上氏「もし今、小沢氏が総理であったら、この安全性の確認、国民への説明をどのようにするのか?また再稼働の手続きをどうするか?」
小沢氏「本当に原発を止めて電力が足りなくなるのかをきちっと検証するべき。また産業用のエネルギーがまかなえるだけの必要最小限の稼働にとどめるべき」
「その間に、新しいエネルギーを検討模索し移行していく。これらのプロセスをすべて国民に時間をかけて問いかけていくべき」
岩上氏「電力不足について。管政権時の国家戦略室の電力が足りているという資料は未だに開示されていない。現在、小沢氏は原発についてどのようなスタンス?」
小沢氏「菅さんの政策には不満だった。国民にしっかり情報を開示して放射能、事故対策をすべきだった。電力需要についてもすべてデータをもって国民に事情を説明すべきだ」
「メルトダウンの認定についても大変遅れた」
「情報を隠すことによってどんどん政府の対応が遅れる」
岩上氏「小沢氏がもし総理になったら情報の公開は徹底されるか?」
小沢氏「日本はあらゆる所で情報が隠蔽されているというのが問題」
岩上氏「民主党はPTを沢山作り、議論しているが非公開。先日もエネルギーPTと事故収束対策PTの合同会議が非公開だった。小沢氏だったら公開する?」
小沢氏「党は政府から出された情報に基づいてやるしかない。正しいことは政府にしか分からない。まずは政府の情報公開こそが必要。党のこともあるが」
岩上氏「仮に段階的廃炉だとして、何年くらいがメドだと考えているか?」
小沢氏「ドイツでは10年。これが大きな参考になる」
《がれき広域処理》
岩上氏「がれきの広域処理と被災地の復興について。広域処理は賛否両論。現地処理はごく一部。阪神大震災の3倍の費用がかかる。なんのために広域処理か?小沢氏の地元の被災地の事情も踏まえて、どう考えるか?」
小沢氏「両論あって良い。処理するのに役所の規制が激しく、役所の許可を待っていたら何ひとつ出来ない。引き受けでも良いが早く決めて欲しい」
「被災地に20兆円という話。しかしそれが地元におりているか疑問がある。知事と相談して国に言おうと思っている」
岩上氏「広域処理は選挙対策という話があるが?」
「被災三県以外の地方議会での議員ので"大変な予算がついた"との発言があった。予算の取り合いという一面もあるのか?業者への見返りは?選挙対策のために今のうちにバラ撒いておくという話も」
小沢氏「20兆円という莫大な金がついているが、役所に握られており使い勝手が悪く、また効率が悪い。仮設のプレハブ建設に中央の大手ゼネコンがとり、大工も連れていくということが。だから寒冷地対策になっていなかったりする」
岩上氏「中央官庁がゼネコンと癒着してるということでは?」
小沢氏「コストが倍くらい高い。この予算で地元の都合でやれ、と言えばいくらでもスピーディに、地元の雇用につながるように使える」
《TPP》
岩上氏「TPPについて。公的医療制度の崩壊など、どうも本質が違うのではないかという話になってきた」
「第一次産業が盛んな東北が被災。そこにつけ込むようにTPPの話が持ち上がっている。主権なく、グローバルな大資本のための条約だとういうことが浮き彫りになってきている。"国民が第一"の小沢氏の意見を。」
小沢氏「私は自由貿易論者で、自由貿易によって日本が利益になるというスタンスに代わりはない。が、自由貿易の裏にアメリカの利益があるというのは違う話」
「TPPと名前を変えてきているが、以前からの構造協議と同じ話。狙いは医療、ゆうちょ。日本のシステムをアメリカのシステムに変えようという話」
「以前、携帯電波の交渉を行った。その時アメリカは日本で使われている電波をアメリカによこせ、と言ってきた」 「私は、何を言ってるんだ!と反対した。アメリカまむちゃくちゃな事を言ってくるが、筋道をたててしっかり反論・主張すればアメリカも何も言えなくなる」
《日米同盟、防衛、北朝鮮》
岩上氏「民主党PTでも激論が交わされた。反対派・慎重派が多い。推進派の根拠は結局日米同盟しかない。日本がアメリカに対して主権を主張するのは4~50年早いという議員も。本質的にはTPPの問題は日米同盟の問題。冷戦が終了し、アメリカ経済も冷え込む現在、対米自立の見通しは?」
小沢氏「今の党内では日米同盟を前提にした、信じられないような意見が出てきている。政治家としての見識を全く持ち合わせていない人の議論だと思う」
「日米関係は(真の)同盟(関係)ではない。アメリカに追随しているだけ。同盟は対等の関係だが、今は主従の関係。都合が悪くなるとすぐに日米同盟を持ち出す。米国のいう通りにしていれば良いと、へんちくりんな考え方をしている政治家が多い。大変危惧している。このままでは日本の自立はありえない」
「自立のためには、日本が同盟国としての責任を果たさなければならない。安全保障を日本が出来る範囲でやれる事がもっとある。それを踏まえてアメリカとしっかり協力していくべき」
「沖縄の基地問題についてもそう。米軍が撤退した時、確かに安全保障上の空白になる恐れがあるのは事実なのだから、そこは日本が自主防衛するべき」
岩上氏「尖閣諸島の緊張が高まっていると喧伝されている。日米同盟ではアメリカは守らないと明記されているが日本に周知されていない。対中国、対北朝鮮を見て、どの程度国防の強化が必要か?」
小沢氏「日本独自の領土だと、中国や世界に対して示せるプレゼンスを持つべき。例えば私は訪中した時、民主党が政権を取ったら尖閣は日本の領土だと明確にすると言った」
小沢氏「相手が中国だろうが何だろうが、言いたい事は言う、守るべきものは守る。いつも、はいはい言っていれば機嫌を取れると思ったら間違いで、主張しないと逆に馬鹿にされる」
岩上氏「巨大な中国の軍備での総力戦は考えなくていい、アメリカの核の傘を前提にするという話になるのか?」
小沢氏「核武装は軍事的にも政治的にも日本に取って良いとは思わない。日本の軍備の増強は誰も望んでいない」
岩上氏「原発の導入時は原子力の平和利用と言いながら、主権国家となった時に核武装するという考えもあったはず。現代においても、将来の核武装を考えて原発を維持すべきという意見もあるが?」
小沢氏「その理屈は賛成できない。すでに何百発分のウランとプルトニウムを持っているが、小型化、兵器化するコスト、政治的なマイナスを鑑みると、まったく現実的とは思えない」
岩上氏「先日、北朝鮮のミサイル打ち上げ失敗の裏で、原発再稼働騒ぎがあったが、北朝鮮の核開発については?」
小沢氏「北(朝鮮)は日本なんか見ていない、アメリカのみ。だから核武装・ミサイル開発というカードは絶対に手放さない。しかし最近中国が格差などで不安定になってきている。これが北朝鮮にも影響」
「中国が善くも悪くも北朝鮮を支え、おさえてきた。しかし中国が国内問題でそれどころじゃなくなった時に、北朝鮮の内部は暴発する可能性がある。戦後の朝鮮動乱と同じ」
「北朝鮮が暴発した時、今の在韓米軍だけではおさえられない」
「北朝鮮が暴発して戦端を開いたらソウルはあっという間だ」
岩上氏「第二次朝鮮戦争が起こったら、日本は何をすべきか?傍観すべき?参戦すべき?」
小沢氏「国連でしょ。国連軍で対処する時、日本も参加するべきでしょう。」
《消費税増税》
岩上氏「消費税増税について。なぜ消費税増税をすべきではないのか、というのは今まで小沢氏はさんざん説いてきた。政界再編の引き金にも成りかねないと思うが、どこまで増税反対を貫くのか?」
小沢氏「どのような状況になろうとも、国民の負担だけになる、という現状の増税策ではいけないというスタンスに変わりはない」
「『改革なくして増税なし』『経済再生なくして増税なし』『社会保障の一体改革なくして増税なし』」
「5%は10〜12兆円の大増税です。増税すべきでない。」
「しかし、今回は採決までいかないと思う。現在は(マスコミの)意図的操作の世論調査でも6割が反対、実際は7割〜8割の反対。国民が大多数反対するものは強行できない。増税を掲げて選挙なんてやろうものならほとんどが落ちる」
《選挙、代表選、裁判》
岩上氏「他メディアの取材で"総選挙は秋頃ではないか"と答えている。代表選に小沢氏自身が立つことも含めて、総選挙と代表選の見通しは?」
小沢氏「野田内閣の支持率が20%を切る状況になったら民主党内がもたない。九月までに党代表選が行われれば、政権交代の初心を持っている人を代表に選び、次期衆院選に臨むべきだ」
岩上氏「小沢グループ、新政研に140名ほど参加しているが、もし連携結べるとしたら、党内外含めてどこか?」
「消費税、TPP、原発、どこを基軸としてて連携を結ぶのか?」
小沢氏「消費税、TPP、原発の個々の政策が争点ではない。官僚任せの政治を根本から政治主導で変えて行く、その理念を共有すること」
岩上氏「最後に。政治主導をやろうとする政治家はひどい目に合うこともある。26日の陸山会事件判決に向けて。捜査報告書を捏造していた田代検事が立件見送りとされた。判決そのものと、不当捜査、検察のあり方について」
小沢氏「判決前なので具体的なことは差し控えるが、これは、裁判長が『組織的違法なもの』と言った。裁判所が適切な判断をしてくれると信じている」
岩上氏「自民党の政権下で始まった権力闘争が、民主党にも引き継がれているのか。この1年、どのように見てきたのか」
小沢氏「新体制を構築しようとする時に、旧体制から攻撃を受けるというのは良くある事。その意味で私が犠牲になった、というかターゲットになった」
岩上氏「小沢氏本人が代表選に立つということはあるのか?」
小沢氏「民主党が政権についたことで一つの仕事はやり遂げたかと思ったが…。」
「それが天命ならどんな役割でもする。日本に民主主義が 定着するように最後のご奉公をしたい。」
岩上氏「平民宰相"原 敬"氏の肖像を掲げているが、どこに惹かれているのか?」
小沢氏「彼が健在だったら、その後の昭和史は起きなかったと思っている。それだけ僕は彼を評価、尊敬している」
以上 まとめ おわり
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